2013年、日本の食文化として「和食」がユネスコの無形文化材に登録されたました。
特有の風土と恵まれた食材、健康志向、おもてなし文化・・・日本が誇る食文化ですね。
長い歴史の中で古くから大切に伝えられてきたことが食文化として今も残り続けています。
今回お伝えする、和食における「茶碗の配膳の位置」もそのひとつです。
このような“しきたり”は、一見面倒だと感じるかもしれません。
ですが、その根底にあるのは、客人を大切に思う「おもてなし心」です。
現代では当たり前のように行っていることでも、それぞれに先人たちが大切にしてきた思想が息づいています。。
日本人であれば自国の食文化を理解する上で、ぜひ知っておきたいものですね。
今日お伝えするのは、和食のお料理(器)の並べ方の基本です。
「なぜ?」・・・
その理由を知ることもあわせて学んでいきましょう♪
和食の基本「一汁三菜」を知ろう♪
和食の正しい配膳は、「一汁三菜(いちじゅうさんさい)」を基本としています。
一汁三菜は、日本の食事形式の特徴を最も表している言葉です。
まず主となる「ご飯」があります。
ご飯と共に出される汁物が1種類で一汁、そのほかのおかず3種類(主菜・副菜・副々菜)で三菜です。
漬物はご飯に必ず添えられるものとして、数には数えません。
メモ
“和食の基本の献立「一汁三菜」”
- 主食(ご飯)
- 汁物(お味噌汁・お吸い物など)
- 主菜(焼き魚・刺身、揚げ物など)
- 副菜(煮物、蒸し物、和え物、卵焼きなど)
- 副々菜(和え物、お浸しなど)
※お漬け物は、副々菜としては数えません。
ただし、現在の和食において、副菜となるおかずが3種類でなくてはいけないと決められているわけではありません。
一汁三菜は、汁や副菜の数を単に示すものではなく、「主食のご飯に対し副食を置き、漬物を添え、これを箸で食べる」という食事の様式をあらわす言葉です。
おかずの数に関わらず、家庭料理、郷土料理、精進料理、日本料理といった和食すべてにおいて、この「一汁三菜」が基本となります。
そして、なんといっても今回の本題である「茶碗を置く位置」も、一汁三菜を基本とした考え方が反映されています。
[st-kaiwa1]世界に誇る日本の食文化とは、食事そのものを指すだけではなく、こういった考え方すべてを含んでいます[/st-kaiwa1]
和食の一汁三菜の正しい配膳位置は?
一汁三菜の基本的な茶碗の配置がこちらです。

手前に「ご飯」と「汁もの」、奥に「おかず」が基本です。
さらに「ご飯」は左手前、「汁物」は右手前、おかずはご飯・汁物の奥に、左から「副菜」→「副々菜」→「主菜」の順番です。
「漬け物」はお膳の中央に置くのが一般的です。
なぜ「ご飯が左」で「汁物が右」?

ご飯を「左」、汁物を「右」に置く理由は諸説あります。
「左上位」説
ご飯を左に置く理由は、左上位の考え方が基本となっているというのが有力です。
日本には古来より、「左を上位、右を下位」とする「左上右下(さじょううげ)」という考え方があります。
これはもともと中国から伝わったものです。
唐の時代、「天帝は北辰に座して南面す」という思想がありましたが、この北辰とは北極星のことを指します。
皇帝が北極星を背にして南に向かって座ると、太陽は皇帝から見て左から昇り右へ沈みます。太陽が昇ることの方が、沈むより尊いということから「左上右下」という考え方が生まれたと言われています。
稲作が生活の中心だった日本人にとって、お米は神様が宿るありがたい食べ物であるとされてきました。
左上位の思想が一汁三菜の食文化にも応用され、主食であるご飯を位の高い左に配置するようになったというわけです。
「食べやすさ重視」説
日本人は右利きの方がほとんどです。
「右はどっち?お箸を持つ方だよ」などと、子どもに教えることもありますね。
手に取る頻度が高いご飯茶碗が左にある方が扱いやすい(食べやすい)ため、左にご飯を置くとした考え方です。
その他にも、ご飯茶碗より汁物の御椀の方が高さが低いので、奥にある主菜が取りやすい、という考え方もあります。
主菜はたいてい、大皿に盛り付けられているので、皿を持ちあげることはせず置いたままいただきます。
この観点からも食べやすさを重視したものであると考えられますね。
左上位なのに、主菜が右なのはなぜ?
一汁三菜の配膳をもう一度見てみましょう。

日本人は米をいちばんに考え、ご飯茶碗を左に置くという左上位説が有力であるとお伝えしました。
それでは副食はどうでしょう。
図を見ていただくとわかるように、「主菜」が右、「副菜」が左が正しい置き方です。
「左上位なら、主菜が左のほうがいいんじゃないの?」
と思われるかもしれませんね。
主菜が右である理由は、私たちが食事をするときの、器の扱い方にあると考えられます。
和食の器は、左手に「持って食べる器」と「持たない器」があります。
基本的には左の手のひらに収まる大きさ茶碗や小鉢、しょうゆ皿は持って食べます。
魚や肉料理、天ぷらなどの主菜がのる比較的大きな皿は、持って食べることはしません。
そのため、右利きが多い日本人にとって、持ち上げないお皿であれば、左にあるより右にあったほうが格段に食べやすいのは想像ができると思います。
このように、一汁三菜を基本とした和食の配膳は、食べ物を尊ぶ文化と、食べやすさや器の扱いやすさといった人への心遣いによって考えられているのです。
[st-kaiwa1]こうしたさりげないところにも、日本人のおもてなしの心が込められているんですね![/st-kaiwa1]
左利きの方の場合

「じゃあ、左利きの方の場合にはどうしたらよいの?」
そんな疑問も出てくるかと思います。
基本的には、左利きの方の場合も茶碗や皿の位置は変えません。
お客様に出すときに、それじゃ不親切じゃない?
と感じるかもしれませんが、日本には、お供えものをするときなどに、左右の置く位置を逆にする風習があるんです。
なかには、こういった「しきたり」や「縁起」を重んじている方がたくさんいます。
不愉快な思いをさせてしまうことも考えられますから、お客様にお出しする際は、たとえ左利きの方でも配置は変えずにお出ししましょう。
自分で食べる食事や、気心の知れた仲間内であれば、食べやすさを優先して器の置き方を工夫してもよいでしょう。
ただし、「箸の向き」は逆でもかまいません。
お客様が左利きだと分かっている場合には、お箸だけはあらかじめ逆にセッティングしておくと親切ですね。
お茶とお菓子の並べ方

デザートの置き方は、お茶が右、お菓子が左です。
これは左手にお菓子を乗せて、右手で湯呑みを取つことを前提とした、お茶の飲みやすさを優先とした考え方です。
ただし、これには注意しなくてはいけない点があります。
特に招かれた立場であれば、やはり湯呑みは両手で頂くのふさわしいでしょう。
また、お菓子を手に取る際は「懐紙」(かいし)を使うか、お皿に乗っていればお皿ごと手に取り、楊枝などで一口サイズに切って口に運びましょう。
懐紙は種や皮が残るフルーツなどが出されたときにも重宝します。
種や皮は懐紙で包んで隠します。
まとめ
一汁三菜を基本とした和食の配膳位置をご紹介しました。
最近はSNSに自作のお料理を投稿する方もたくさんいます。
お料理の写真はとても人気ですね。
多彩な食材、健康志向、見た目の美しさ、独自に発展してきたおもてなし文化を背景に、和食は世界からも大変注目を集めています。
日本人として自信を持って日本の食文化を伝えるためにも是非覚えておきましょう♪