接客・接待のお茶出しマナー「たかがお茶出し」を「渾身の一杯」に!

日本では、来客にまずお茶をお出しするという文化があります。
わざわざ足を運んでくださったお客様に、一息ついて喉の渇きを潤していただきたいという日本人の素晴らしいおもてなしの心ですね。

とはいえ、通常日本料理では、食事中の水やお茶はほとんど出されません。
これは、会席料理がもともとお酒を楽しむための肴(さかな)としてできた料理だからです。

お茶の出し方は料理店によって様々ですが、多くの日本料理店では食後にお茶を出すのは食後に口の中をサッパリとさせてほしいという目的があるからです。

ビジネスでも、必ずお茶を出す目的があります。
大事な商談の席か、社内の打ち合わせか、営業に訪れた来客か・・・

逆に目的を念頭におかないお茶出しは、形ばかりの味気ないものになってしまいます。

ぜひとも、「たかがお茶」が「渾身の一杯」になるお茶出しのマナーを身に着けてください。

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シーン別お茶の種類~お茶の特性を知ろう!

食前 煎茶

わざわざ足を運んでくださったお客様に、まずはホッと一息入れていただきたいという思いを込めて出すお茶です。

ここで出すお茶は煎茶がよいでしょう。

食前のお茶はお腹を暖め食欲を促します

食事中 煎茶

食事中のお茶は、口の中をサッパリとさせ、さまざまな料理のうま味を引き出す効果が期待できます。

また、お茶にはカフェイン、カテキン、フラボノイド、多糖類、フッ素など、様々な成分が含まれています。

これらが胃腸の働きや体内の変化を適切に調整する働きをもっていることは、科学的にも解明されてきているようです。

食後 ほうじ茶・番茶

ほうじ茶は、苦みや渋みが少なく香ばしい風味を楽しむことができます。
食後のねばついた口の中をサッパリとさせる効果があります。

また、ほうじ茶や番茶に豊富に含まれるカテキンには、殺菌効果消臭効果がありますので、口の中の雑菌の増殖や口臭を抑えることができます。

大事な仕事・商談 上級煎茶

大事な会議や商談などには上級煎茶がおすすめです。

上級煎茶は、普通煎茶よりもカフェインが多く含まれています。

お茶の深い香りと共に、カフェインは脳の活動を活発化させ集中力も高める効果があります。

仕事の後に 玉露・抹茶

玉露や抹茶に含まれるテアニンという旨味(甘味)成分にはリラックス効果があります。

難しい仕事や忙しかった仕事の後に、緊張をほぐし脳への栄養補給を促します。

夜遅い時間に ほうじ茶・番茶

夜中などの遅い時間には、ほうじ茶や番茶のようなカフェインが少ないお茶がよいでしょう。

水分補給として、大量に飲んでも安心です。

逆に夜中に片づけなくてはならない仕事や学習があるときは、カフェインが多く含まれた煎茶をおすすめします。

子ども・お年寄りに ほうじ茶・番茶

ほうじ茶や番茶など、カテキンやカフェインが少なく刺激の少ないお茶がよいでしょう。

苦味や渋味も抑えられ、お子様にも飲みやすいやさしい味です。

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料理店での接客お茶出しマナー

別室で入れたものを運ぶ

料理店でお客様にお茶を出す場合、基本的には別室で入れたもの茶托にのせて運びます。
人数が多い場合は、茶托は別に重ねてお盆に乗せるとよいでしょう。

万が一こぼしてしまった時のことを考え、畳んだふきんをお盆に乗せていきましょう。

胸の高さに両手でしっかりと持ち運びます。
この時、お茶に息がかからないよう正面を避けて少し斜めに持つといった配慮も必要です。

美味しいお茶の淹れ方はこちら

茶碗・茶托は正面を向ける

湯呑茶碗や茶托には、絵柄や形によって正面があります。
お出しするときは、正面をお客様に向けて出しましょう。

【正面がないもの】
・柄がない無地のもの
・全体に柄があるもの
・木目や柄の無い丸い茶托

正面がない茶碗と茶托

【正面があるもの】
・一部に柄が描かれているもの
・特に華やかな部分があるもの
・丸くない茶托
・木目のある茶托

正面がある茶碗と茶托

【茶托の向き】
茶托は、木目がお客様に対し横になるようにお出ししましょう。
木目に広狭がある場合は、木目の広い方が正面になります。



湯呑茶碗と茶たくの正面はあわせてセッティングしましょう。

今般のコロナ禍において、感染予防対策として蓋つき湯呑茶碗の使用をおすすめします。
蓋付きの場合も柄の有無や木目を見て、正面を合わせてお出ししましょう。

上座のお客様から出す

お茶をお出しする順番は上座からです。

上座を見わける判断基準は、

・入口から遠い位置
・床の間がある(床の間を背にした)位置
・景色がよく見える位置

などです。

部屋のつくりによって変りますので、事前に確認しておきましょう。
料理店の場合は、サービスマニュアルに記載しておくといいですね。

ただし、席次については様々な場面が考えられます。
あらかじめ主催者様によって決められている場合は、担当者に確認しておくとよいでしょう。

和室(座敷)での出し方

和室でお茶をお出しする場合、運び出しはお盆に乗せていき、お客様の右側に座り一旦畳にお盆を置きます。

お客様の右側後方から「お茶をどうぞ」と両手で静かにお出しするのが基本です。
片手でお出しする場合は左手で右の袂を押さえたり、手を添えるしぐさを加えることで美しい所作になります。

右からお出しできないときや、狭くて相手の後方に回れない場合もあります。
その場合、無理な体勢で出すよりは、左側や前方からお出しするほうが安全です。
「こちらから失礼いたします」「前から失礼いたします」と一声かけてお出しすれば問題ありません。

ちなみにお菓子がある場合は、お茶を出す前に先にお菓子をお客様の左側に置き、右にお茶がくるように置きます。

お料理が並んでいて置けない場合は、お茶を置くスペースを作ってからお茶を置きます。

椅子テーブルでの出し方

最近は日本料理店でも椅子とテーブルを使用しているお店が多く見られます。

この場合は畳にお盆を置くことは厳禁です。

サイドテーブルを使い、一つずつ茶托を持ってお出ししましょう。

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【ビジネス】接待でのお茶入れマナー

オフィスでお茶を淹れる際も、基本的には料理店の接客時と同じです。

「違い」は何かというと、「本来の目的」を考える必要があります。

料理店でお茶を出す第一の目的は、メインであるお料理を美味しく召し上がっていただきたいという店側の思いです。

それでは、皆様のオフィスではどうでしょう。

そのお相手は、どのような目的で訪れたお客様でしょうか。

社長を訪ねてきた古くからの友人でしょうか。
大事な商談をまとめるために来社されたお客様でしょうか。
社内でのプレゼンテーション会議に集まった社員でしょうか。

オフィスでは、仕事の目的を円滑に進めることが最優先です。
このことを念頭に置き、お茶を出すタイミングや位置などを考える必要があります。

また、ゆったりと時間が流れる日本料理店とは違い、手早くスピーディーにお茶を出すことで早く本題に入ることができるかもしれませんね。

別室で淹れたものを運ぶ

基本的には給湯室など別室でお茶を淹れます。

お茶を淹れた人数分の湯呑茶碗と、重ねた茶托は別々にお盆に乗せます。

万が一こぼしてしまったとき、また湯呑茶碗の底にを拭くときのための布巾も、畳んでお盆に乗せておきましょう。

※現在コロナ禍において、感染予防対策として蓋つき湯呑茶碗の使用をおすすめします。
蓋付きの場合も柄の有無や木目を見て、正面を合わせてお出ししましょう。

美味しいお茶の淹れ方はこちら

入室

ドアをノックし「失礼します」という声掛けをして入室します。
お客様の顔が見えたら軽く会釈しましょう。

お茶のセッティング

サイドテーブルがある場合はお盆を一旦置きます。
サイドテーブルがない場合、邪魔にならなければ下座側(入口側)のテーブルの端に置きます。

お盆の上で茶托と湯呑茶碗をセットします。

このとき、湯呑茶碗と茶托の正面を合わせます。
また、湯呑茶碗の底が濡れていたら、ふきんで拭って茶托に乗せましょう。

置く場所がない場合、お盆を左手に持ちながら片手でお茶をお出しすることになります。
多人数の場合は分けて運ぶなど、無理のないようにしましょう。

お茶を配る

お茶がセッティングできたら、上座から順番にお出しします。

基本的な考え方は、上座は出入り口からいちばん離れた位置、下座は最も近い位置です。
3人掛けのソファなどは、真ん中が上座になる場合もあるので注意が必要です。

できるだけお客様の右側から両手で静かに差し出します。
「どうぞ」という声掛けがあるとよいですが、会話の最中であれば目礼のみにとどめましょう。

湯呑茶碗・茶托に絵柄や木目がある場合は、お客様に対し正面が向くように置きます。

応接室などテーブルが低い場合は、腰を落として出しましょう。

退室

お茶を出し終えたら、お盆の表を外側にして左脇に抱え静かに一礼して退室するのがスマートです。

お客様を一人で待たせている状態であれば、「もう少々お待ちください」などの言葉を添えると丁寧ですね。

右側や後方に回れない場合

場所の都合で右からお出しできないときや、狭くて相手の後方に回れない場合もあります。

その場合、無理な体勢で出すよりは、左側や前方からお出しするほうが安全です。
「こちらから失礼いたします」「前から失礼いたします」と一声かけてお出しすれば問題ありません。

お茶の入れ直す(おかわり)

会議や打ち合わせが長引いた場合、2杯目のお茶をお出しすることも少なくありません。
2杯目のタイミングは、1杯目を出した30分後が目安だといわれています。

とはいえ、会議や打ち合わせの妨げにならないように配慮することが大切です。

会議が落ち着いた頃合いを見計らって出すのがベストですが、状況に応じて臨機応変に対応することが必要になります。

お茶を入れ直すときは、、茶托ごと下げて新しい湯飲みと茶托を出すのが一般的です。
同じ茶碗につぎ足したり、冷めたお茶を捨てて注ぐことは避けましょう。

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まとめ

日本料理店でのお茶出しも、オフィスでのお茶出しも、慣れてしまえばどうってことない簡単な作業になることでしょう。

しかしこの「慣れ」は少々危険です。

相手を思い心を込めて淹れたお茶と、ただ流れ作業で淹れたお茶では、相手の潜在意識(無意識)の中で格段の違いを生み出します。

お茶入れ一つでまた来たいお店になるか、また訪れたい会社となるか・・・決して大げさな例ではないと思っています。

ぜひ、相手を思うおもてなしの心で「渾身の一杯」をお出ししてくださいね。

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