ご祝儀や香典など、のし袋(金封)でお金を贈る際には、「中包み」や「中袋」にお金を入れてから上包みで包むのが正しい使い方です。
これは、「お金を丁寧に扱う」という意味があるほかに、中包み・中袋に金額や住所・姓名を書くことで、「受け取る側が整理しやすくなる」ための相手への心遣いでもあります。
のし袋を用意して、いざお金を入れようとする段階で、「あれ?どの向きが正しいの」と戸惑ってしまう方も少なくありません。
今回は、のし袋の中包み・中袋の正しい使い方を紹介します。
慶事と弔事でお金の入れ方も違う!
「え? のし袋(上包み)の種類さえ間違えなければいいんじゃないの?」
と思われる方もいるかもしれませんが、中包みにも正式なマナーがあります。
慶事(結婚・出産などのめでたいこと)と、弔事(死去・葬儀などのお悔やみごと)では、中包み・中袋へのお金の入れ方や使い方が違います。
贈るお相手によっては、信心深く、縁起を重んじる方もいます。
贈る側はそれほど気にならなくても、できる限りの配慮はできるようにしておきたいものですね。
ぜひ正しいマナーを知っておきましょう。
まずは中包み・中袋を用意しよう

「中包み」「中袋」とは?
御祝儀袋や不祝儀袋の“顔”となる外袋を、「上包み」というのに対し、その中に入れるお金を包む半紙サイズの紙を折ったものを「中包み」、また、白い封筒を「中袋」と言います。
お金は「中包み」「中袋」に入れるのが基本
御祝儀袋や香典袋を購入すると、ほとんどの場合、本体である「上包み」のほかに「中包み」や「中袋」がセットになっています。
基本的に、お金は中包みや中袋に入れてから包むのがマナーです。
中包みや中袋がついていない場合は、白地の和紙や白い封筒で代用することができます。
水引が印刷された のし袋の場合

水引が印刷された「封筒タイプ」の“のし袋”があります。
これは1万円以下の金額の少ない場合に使うのが一般的です。
このタイプののし袋は、中袋や中包みは使わず直接お金を入れます。
中包み・中袋に封はしない
一般的に、中包みや中包みは封をする必要はありません。
金額が大きい場合など、稀にのり付けすることがあるようですが、その場合は手紙の封同様「封」「〆」の印を書きます。
中包みの折り方
たいていは購入した金封にセットになっていますが、中包みを自身で用意する場合は、白地の和紙などで代用することができます。
用意するのは半紙サイズ(縦35cm×横25cm)の和紙です。
和紙が用意できない場合は、シワや折り目のないコピー紙などでも可能です。
コピー用紙を代用するときは、B4サイズがもっとも適しています。
中包みの折り方手順
① 和紙(コピー用紙でも可)は裏を上にして置きます。
慶事の場合は肖像画の面を「上」にしてはじめる
慶事(お祝い)の場合はお札の表(肖像画が描かれている面)を上にして包み始めると、最終的に表にきます。
逆に弔事(お悔やみ)は表を伏せて置きます。
② お札の下側を三角に折り上げます。

③ お札の幅に合わせ左→右の順に折ります。


④ お札の大きさより広めに2回、包むように折りたたみます。

余った部分は内側に折り込んで出来上がり!
お金の入れ方(慶事の場合)
慶事は新札を用意する

結婚式などのお祝いごとの場合は新札を用意しましょう。
新札とは、発行されてから一度も使用されていないお札です。
御祝儀の場合、新郎新婦の新しい門出を、折り目のないまっさらな新札に込めてお祝いするという意味があります。
ほかにも、新札は事前に準備が必要ですから、「二人の結婚式を心待ちにしていましたよ」という意味も込められています。
新札は銀行や郵便局で両替ができます。
基本的に両替できるのは平日の窓口のみですので、余裕をもって早めに両替しておきましょう。
慶事のときの「お金の重ね方」
お札を複数枚入れるときは、必ず表裏と上下の向きをそろえましょう。
お札は人物の肖像がある面が表です。
違う種類のお札を重ねる場合は、表面を向けたときに金額の大きいお札が手前になるようにします。
慶事のときの「お金の向き」

◆中袋(封筒)の場合
お祝い事では、お札は肖像画が描かれている表面を上にして、さらに肖像画が上になるように中袋(封筒)に入れます
◆中包みの場合
同様に慶事では、お札の表(肖像画がある面)が中包みの表面にむくように包みます。
包み方で説明した通り、お札を表にして包み始めればOK!
中包みの上下は、縦にしたときに、空きが左上になる向きです。

逆(空きが右下)は、お悔やみ事の場合ですので注意しましょう。
お金の入れ方(弔事の場合)
弔事では新札・ピン札はタブー

香典としてお金を包む際に使うお札は、旧札を使うのがマナーです。
結婚式などと違い、お悔やみ事は事前に決まっているものではありません。
香典に新札を包むことは故人のご不幸を予期していたような、マイナスな印象を与えてしまう可能性があります。
新札・ピン札しかない場合は、必ず一度折り目をつけましょう。
弔事のときのお金の重ね方
不祝儀のときも、お札を複数枚入れるときは必ず表裏と上下の向きをそろえましょう。
違う種類のお札を重ねる場合は、表面を向けたときに金額の大きいお札が手前になるようにします。
弔事のときの「お金の向き」

◆中袋(封筒)の場合
お悔やみの場合は封筒を表から見たときに、お札の裏面が向くように入れます。
「顔」を伏せるという意味が込められているといわれます。
お札の上下はどちらの説もあり、地域によっても違いがあるのでお札が裏を向いていれば、さほど気にする必要はないでしょう。
◆中包みの場合
中包みを表に向けたときに、お札の裏面が向くように包みます。
前述の「お金の包み方」の慶事とは逆で、お札を裏面にしてスタートすると、このようにできあがります。
弔事の場合の中包みの表面とは、折ったときにできる空きが右下にくる向きです。
空きが「左にくるのはお祝い事」のときですから注意しましょう。
中包み・中袋の書き方
中包みや中袋には、金額と住所・姓名を書きます。
これは、受け取った側が整理するためのものですので丁寧に書きましょう。
また、慶事と弔事では、金額を書く位置が異なりますので注意しましょう。
金額は旧字体が正式?
慶事・弔事とも、中包みや中袋には金額を記します。
金額は縦書きで「金 ○○円」と書きます。
この時の金額は、旧字体を用いるのが正式なマナーとされてきましたが、現在は略式でも失礼にはあたりません。
参考までに・・・
【金額の書き方】
正式 略式
金 伍阡円 金 五千円
金 壱萬円 金 一万円
金 弐萬円 金 二万円
金 参萬円 金 三万円
金 伍萬円 金 五万円
金 拾萬円 金 十万円
[st-kaiwa1]かつては数字の改ざんを防ぐために使われていた大字(旧字体)ですが、今はさほどこだわらなくてもよいでしょう[/st-kaiwa1]
慶事の場合の書き方
◆中袋(封筒)

◆中包み

慶事の場合は、表面の中央に縦書きで金額を書きます。
上下、左右適度なスペースを確保し、バランスよく書きましょう。
裏面の左下に住所、姓名を縦に書きます。
文字の大きさは金額よりも小さめです。
中包みも同じです。
弔事の場合の書き方

弔事の場合、表面には何も書きません。
裏面の右下に金額、左下に住所と姓名を書きます。
中包みも同様です。
(包みの上下が慶事と異なりますので注意が必要です)
[st-kaiwa1]慶事と弔事の違いは、「金額を書く位置」だけです[/st-kaiwa1]
上包みの包み方
中包み・中袋に金額・住所・姓名を記し、お金を入れて準備が整ったら上包みで包みます。
上包みにも、包み方のルールがあります。
特に気をつけたいのは裏の折り返し。
慶事は下側が上に、弔事は上側が上になりますので気をつけましょう。
◆慶事
「下」の折り返しが上になる
◆弔事
「上」の折りが上になる
まとめ
のし袋の「中包み・中袋の使い方」について紹介してきました。
最後にもう一つ、
ぜひとも皆さんに注意していただきたいことがあります。
それは、「封筒に書いた額面の通りお金を入れたか確かめる」ということです。
まさか~~!お金を入れ忘れる人なんていないでしょ~と思うかもしれませんが、これが意外にもありがちな話なのです。
私も今までに2回経験があります。
いずれも法事でしたが、1回は書かれている金額と違っており、もう1回は封筒にお金が入っていませんでした。
御本人もまさか入れ忘れているとは思っていないでしょう。
お祝いでもお悔やみでも、これらは贈る側の善意です。
その方の心遣いは伝わりますし、「入ってなかったわよ」とは、なかなか言いづらいものですね^^;
今回の記事を参考にして、これからの気持ちの良いお付き合いのためにお役立てください。