会社の接待や目上の人との打合せ。
席に案内する際どこへ案内したらよいものか・・・
自分はどこに座ったらよいのか・・・
と、ドキッとした経験はありませんか?
日本には、「上座・下座」という席次のマナーがあります。
これは、相手に対する敬意であり、おもてなしの気持ちを表すのための日本人独特の文化です。
上座下座の考え方は、和室に限ったものではありません。
洋室、会議室、タクシー、エレベーターといった様々な場所で用いられます。
日本人は良くも悪くも、位置や順番に対してとても敏感な国民性。
上座下座は、ビジネスシーンや接客において大変重要ですので、是非理解しておきたいものです。
目次
「上座・下座」の考え方
座席には多くの場合、「上座(かみざ)」「下座(しもざ)」が存在します。
「じょうざ・げざ」という呼び方もします。
「上座」は、部屋の中でもっとも安全で心地良い席で、目上の人やお客さまが座ります。
一方「下座」は、出入口に近く接客に都合がいい席で、目下の人や接待する側が座るのが基本です。
取引先であったりお客様であれば分かりやすいですが、では、同じ会社内ではどうでしょう。
同じ会社内で上座に座る人は誰かと迷ったときには、以下の優先順位で考えます。
1、役職
2、職歴
3、年齢
まず第一に考えるのは役職です。
同じ役職の場合は社歴を、社歴が同じならば年齢が上の人が上座という順番です。

昔から日本では、縦の上下関係に対する礼節が重んじられてきました。
「上座下座」の起源は、和室にある「床の間」だと考えられています。
「床の間」は室町時代から安土桃山時代にかけて完成した書院造りの一部で、部屋の床より一段高くなっている、現在は掛け軸や調度品などを飾るスペースです。
床の間の由来は諸説ありますが、当時は「上段の間」といわれる、身分の高い人が座ったり寝たりする場所だったといわれています。
現代社会において少々時代遅れでは?と考える方もいるかもしれませんが、実際には現在も、目上や顧客に対しての礼儀として大切だと考える方は多くいます。
特にビジネスにおいては、会社の印象や商談に影響を及ぼす可能性もあるので、ぜひ覚えておきましょう。
位置や順番が重要であると考えるのは、日本に限ったことではありません。
国際儀礼(プロトコル)においても、各国の代表が座る席や立ち位置は厳密に決められます。
プロトコルは、文化や習慣、歴史的背景の違う国の代表同士が、「気持ちよくわだかまりなく交流するため」にはなくてはならないものです。
同じように日本における上座下座も、位置や順番に対して敏感な日本人が、相手に失礼にならないように定めた基準であり、お互いが気持ちよく過ごすためのものです。
上座下座を単なる決まり事と考えるのではなく、心地よく過ごしていただきたいという「おもてなしの視点」で、相手に敬意を表しましょう。
「和室」の上座・下座の決め方
和室の間取りには、さまざまなパターンがありますね。
ここでは、基本的な上座下座の考え方を紹介します。
(※表記した番号は、➀から順に上座の位置を示します。)
ルール①上座は入口からいちばん遠い席
まず、基本的に入り口から最も遠い奥の席が「上座」となります。
逆に最も入り口に近い席が「下座」となります。
入口が2か所以上ある広い部屋の場合は、人の出入りが頻繁な出入口から遠く、もっとも落ち着ける席を上座とします。

ルール②床の間の背にする席が上座
床の間がある和室では、床の間にもっとも近く床の間を背にした席が「上座」です。
床の間は昔から、部屋の中でもっとも大切な場所とされてきました。
そのような場所の近くに、「大切なお客様にお座りいただく」ということです。
◆床の間に対してテーブルが水平に置かれている場合
出入口から遠く、床の間にもっとも近い席が上座となります。
出入口にいちばん近い席が下座となります。

◆床の間に対し、テーブルが垂直に置かれている場合
床の間・床脇に対して、テーブルが縦に置かれている場合は、床の間にいちばん近い席が上座、その向かいを2番とします。
出入口に近い席が下座という考え方は変わりません。

◆床の間が中央にある場合
床の間が真ん中にある和室の場合は、床の間を背にする席を上座とし、出入口から遠い席を2番、出入口からいちばん近い席が下座となります。
これはあくまでも基本的な考え方です。
たとえば、上位の方(①②)同士が中心となり話をすることが多い場合は上座の向かい(④の位置)に2番目の方がくる場合もあります。
また、下記の③よりも④の位置の方がゆったりとしている場合、③の位置を下座としてもよいでしょう。

どっちが上座?と迷ったら、「居心地が良い場所はどこだろう」と考えましょう。[/st-kaiwa1]
ルール③左上位
日本の伝統礼法に、「左上右下(さじょううげ)」というものがあります。
「左を上位、右を下位」とする左上位のしきたりです。
ちなみに国際儀礼(プロトコル)や欧米では「右上位」なので、外国の方と接する場合は、誤解されないよう注意が必要です。
ルール④美しい景観が望める席が上座
美しく手入れされた庭に面した部屋では、美しい景観が望める席を「上座」としておすすめします。
これはお客様に、景色を楽しんでいただきたいという配慮です。
この時、その席が出入口に近かったり床の間から遠い場合は、相手に誤解をあたえないためにも「綺麗な景色が望めますのでよろしければこちらにお座りください」と、さりげなく理由を添えておすすめするとよいでしょう。

「宴会の席」の上座・下座の決め方

お客様を接待する場合
会社の接待やお客様を家に招く場合などは、「同じ会社」や「家族」など同じグループ同士が横並びになるように座ります。

主賓がいる場合
主賓がいる場合は主賓がもっとも上座に座ります。
主賓の正面が②番となり、出入口に遠く主賓の隣が③、その向かいが④となります。

床の間に対して垂直に並ぶ場合
出入り口からいちばん遠い席が上座、その向かいに②番、以降向かい合うよう交互になります。

その他の配慮
本来上座である席が、「日差しによって眩しい」「冷房の風が直接あたってしまう」という場合もあるでしょう。
その場合、自宅や店舗を経営する立場であれば、まずは日差しが直接当たらない工夫をしましょう。
冷暖房も風向きや風量を調整し、お客様が不快な思いをしないよう配慮が必要です。
そのうえで、どうしても上座に弊害が出てしまう場合は、「こちらは日差しが眩しいのでこちら側へどうぞ」と、説明を加えて違う席をすすめましょう。
繰り返しになりますが、その空間で「もっともくつろげる場所」が上座と考えましょう。

また、会社の接待や親睦会などで会場の手配を任されたら、事前にその部屋の上座下座を確認しておきましょう。
前日までに確認できれば申し分ないのですが、難しい場合もありますね。
そんなときは当日早めに会場に行き確認しましょう。
上座がどこかと悩んだときは、部屋のことを良くわかっているお店の方に相談してもよいですね。
また、接待する側は、飲み物や料理のタイミング、追加オーダー、清算の仕方など、お店の方と打合せやコミュニケーションは大切です。
なにかと忙しく動かなくてはいけない場面もありますので、入口に近い下座に座る必要があります。
「洋室」の上座・下座の決め方
洋室の上座下座の考え方は、基本的に和室と同じです。
洋室には床の間がありませんから、基本は入口からいちばん遠い席が「上座」、入口にいちばん近い席が「下座」になります。
ただし例外もあります。
6人以上の会議や打合せで、上位者が話の中心となるとあらかじめ予想されている場合など、横並びの椅子の中央をすすめる場合もあります。
応接室(ソファー)の上座下座
出入口からいちばん遠い席が上座です。
長いソファーと一人掛けソファーがある場合、長いソファーのいちばん奥が上座となります。
また、絵が飾ってある場合は、絵を正面に見ることができる席が上座です。
絵を飾る場合、下の図であれば一人掛けソファーの背面に絵を飾るのが正解です。

「会議室」の上座・下座の決め方
会議の場合は中央に議長が座ります。
出入口から遠い席が上座、出入口にいちばん近い席が下座です。

「タクシー・自家車」の上座・下座の決め方
タクシーに乗る場合
タクシーは運転手の後ろにあたる後部座席の一番奥が上座です。
助手席が下座となり、運転手に行先を告げたり会計をしたりといった役割となります。

上座は「いちばん安全な場所」と考えるとわかりやすいですね。
一方、下座は運転手とのやりとりがしやすい場所と考えましょう。
自家用車の場合
自家用車の場合、助手席が上座、後部座席の真ん中が下座となります。

「エレベーター」の上座・下座の決め方
4人で乗る場合
エレベーターに4人で乗る場合、奥が上座、出入口に近い方が下座です。

5人で乗る場合
5人で乗る場合は、出入口に近い位置に3名が立ちます。
この場合も操作ボタンを押す位置は下座となります。

目上の方から上座に勧められた場合
目上の方から上座をすすめられた場合、特に来客として招かれた場合は上座を辞退するのはかえって失礼にあたります。
お相手の思いを感謝して受け取りましょう。
接待や幹事などで、頻繁に部屋の出入りが多いことが分かっている場合には、その旨を伝え下座にすわらせていただくこともあります。
まとめ
和室に限らず、部屋の間取りや椅子・テーブルなどのレイアウトは様々です。
上座下座を分かっているつもりでも、いざその場になると迷ってしまうこともよくあることです。
まずは基本となる上座下座の基本の考え方は理解しておきましょう。
基本をふまえた上で、迷った場合には「いちばん居心地が良い場所はどこか?」「いちばん安全な場所はどこか?」を考えてみましょう。
特に人数が多い会議や宴会などでは、上座下座を決めるのが難しい場合もあります。
そのようなときは、何よりもお互いが気持ちよく過ごすことができるように配慮することが大切ですね。
《上座下座の基本ルール》