母「今日は土用の丑の日だから鰻を食べる日だよ~♪」
息子「やったー!うなぎだ~!
ところで、どうして土用の丑の日にうなぎを食べるの?
そもそも、土用の丑ってなんこと?」
母「・・・・・・・・
昔からそういう日なんだよ^^;」
恥ずかしながら、ひと昔前の我が家の会話です。
土用の丑(うし)の日にうなぎを食べるという習慣を知っている方は多いと思いますが、そもそも、
土用の丑の日ってどんな日なのか、
どうしてこの日にうなぎを食べるのか、
意外と知られていません。
この記事では、土用の丑の日の意味や由来、そして土用の丑の日にどうしてうなぎを食べるのか、できる限りわかりやすく解説していきたいと思います。
まず…「土用」って何?
1年の移ろいを表す言葉には、春夏秋冬の四季や和風月名、季節の節目である特別な日とされた五節句(人日、上巳、端午、七夕、重陽)など様々なものがありますね。
農業が生活の中心だった時代、季節の移り変わり知ることは、農作業をする人たちにとって大変重要なことでした。
ところが困ったことに、それまでの中国由来の暦だけでは、十分に季節の変化をつかむことができませんでした。
そこで、従来の暦の補助する役割として出来上がったのが雑節です。
節分、彼岸、社日、入梅など、聞き慣れているものもあるのではないでしょうか。
そして「土用」も、この雑節にあたります。
この「土用」とは、どのような意味があるのでしょうか。
それを知るには、古くから伝わる暦をもう少しだけ理解する必要があります。
日本に伝わる暦は、古代中国で生まれた「陰陽説」「五行説」が元になっています。
陰陽説とは、この世のすべてのものは「陰」と「陽」の相反するふたつの気で成りたっているという考え方。
一方の五行説は、万物は「木・火・土・金・水」の五つの元素で成りたっているとする思想です。
五行の「行」には、「巡る」「運行」という意味があります。
古代中国人にとって、木星・火星・土星・金星・水星という異なる5つの惑星の複雑な運行は、非常に神秘的なものでした。
五行には特性があり、さまざまなものが五行の性質に当たると考えられていました。
「五つの元素は互いに順応して、相互作用によって変化し循環している」という考え方です。
そして、土用は文字通り、五行説の土を指しています。

森羅万象、限りなくすべての物事に当てはまると考えられていますので、季節にも当てはまります。
五行説において季節を分類すると、
春 ⇒ 「木」
夏 ⇒ 「火」
秋 ⇒ 「金」
冬 ⇒ 「水」
となります。
そう、お気づきですか?
「土」が余ってしまいます。
そもそも「土」には、特別な意味があると考えられていました。
生き物は死ぬと土に還ります。そして、その土から植物が芽を出します。
そんな「土」には「死と再生の力」があるとされ、すべての季節に均等に割り振られていると考えられてきたのです。
これが「土用」の由来です。
「夏の土用の丑の日」が有名なので、土用はこの時期だけのものと思われがちですが、実はそれぞれの季節に土用があります。
季節ごとに立春・立夏・立秋・立冬の前18日間が土用とされ、「土用の入り」とは、それぞれ18日間の最初の日を指します。
こうして土用は、特に「季節の変わり目」として欠かせない暦の一つになった、というわけです。
それぞれ「春土用」「夏土用」「秋土用」「冬土用」とも呼ばれているんですよ。
丑(うし)の日っていつ?

「丑(うし)」は、十二支のひとつで、「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」の中の「丑」を指しています。
十二支は、古くから方角や月日、時間を数えるにも使用されてきました。
「草木も眠る丑三つ時」などの言い方が今でも残っていますね。夏の夜の怪談話を思い出します。
月日(すべての日付)は十二支で表されます。
なので、12日に一度「丑の日」がやってくることになります。
「土用の丑の日」とは、「土用」(約18日間)の中の「丑」にあたる日ということです。
2022年でいえば、7月20日~8月6日の18日間が夏土用です。
そして、その間の丑の日は、7月23日と8月4日。
このように「一の丑」「二の丑」と呼ぶ、土用の丑の日が2回巡ってくることもあるのです。
「十二支って干支のことでしょ、今年の干支は寅だよね」
正確にいうと、これには誤りがあります。
私たちが日ごろ使っている干支(えと)は、その名の通り、十干(甲・乙・丙・・・本来は日付を表す符号)と、十二支を組み合わせたものを表します。
干支は全部で60種類あります。
ですので、60年で1周です。
自分が生まれた年の干支が60年かけて1周し、再び生まれたときの干支に戻る、つまり暦が還ることから、60歳を還暦と呼んでお祝いをするんですね♪
土用の丑にウナギを食べる理由

日本では、「土用の丑の日」にうなぎを食べる習慣があります。
古くから、土用の丑の日には「う」のつく食べ物を食べると縁起がいいとされてきました。梅干し、瓜、うどんなどが人気だったようです。
中でも立秋前の土用の期間(夏土用)で、最も暑さが厳しい「丑の日」にうなぎを食べる慣わしがあります。
諸説ありますが、これは学者であり発明家でもあった平賀源内が、営業不振で困っていた鰻屋に、『本日、土用の丑の日』と書かれた貼り紙を勧めたことから広まったと言われています。
これが縁起を担ぐのが好きな粋な江戸っ子の気持ちをくすぐったのでしょう。「う」のつく「うなぎ」は、土用の丑の日の定番になったというわけです。
うなぎの歴史は古く、「万葉集」にも登場しています。
「石麻呂に吾れもの申す夏痩せに、よしといふものぞ鰻(むなぎ)とり食(め)せ」
大伴家持(おおとものやかもち)が詠んだ歌です。
鰻は「むなぎ」と呼ばれ、昔から栄養豊富な食べ物として食されてきました。
現代ではうなぎを開き、白焼きや蒲焼にして食べるのが一般的ですが、室町時代の料理書によると、この時代はうなぎを開かず縦に串に刺して焼いていたようです。
このうなぎの姿が、「蒲の穂」に似ていたことから「かばやき」と呼ばれるようになり、現在のような形になったのは江戸時代からだといわれています。
ちなみに「江戸の背切り、上方の腹裂き」といって、関東と関西では鰻のさばき方が違うのはご存知ですか?
こちらも理由は歴史的な背景があります。
武家政治の中心だった江戸では、腹を裂くことは切腹をイメージさせることから背開きに。
一方、商人文化が栄えた関西では。「おたがいに腹を割って話そう」という意味合いで腹開きになったといわれています。
ただ、これはあくまでも言い伝えです。
実際には、うなぎを蒸す関東では、鰻の背側の厚い部分に串を打たなければならないため背開きに、うなぎを蒸さない関西では、腹開きで焼いても崩れないため腹開きになったという説や、もともと上方(関西)から伝わった調理法が、作業効率などの面から江戸で進化を遂げ背開きになったともいわれています。
こうして人々に親しまれてきたうなぎは、栄養価も満点!
うなぎには、体の抵抗力を高めるビタミンAや、疲労回復を助けるビタミンB1が豊富に含まれ、夏バテ予防食材でもあります。
人々がその効果が実感できたことで、「土用の丑の日=うなぎ」が定着したと考えられます。
2022年土用の丑はいつ?
土用の丑の日は毎年変わります。
2022年の土用は以下の期間です。
1月17(月)~2月3日(木)
4月17日(日)~5月4日(水)
7月20日(水)~8月6日(土)
10月20日(木)~11月6日(日)
そして、2022年、夏の土用の丑の日は、
7月23日(土)と8月4日(木)です。
「土用にやってはいけないこと」がある?!
土用の期間中に「やってはいけない」とされることがあるのをご存知ですか?
良いとされることで縁起を担ぐ一方で、縁起の悪いことをしない「物忌み」があるのも古代の思想です。
ただ、これらの物忌みの背景には、季節の変わり目に大仕事をして農作業に支障が出ないようにという戒めがあったといわれています。
やはりここからも生活の中心だった農業と密につながっていることがわかります。
どんなものが禁止といわれていたかはこちら。
- 土を動かすこと
土用期間中は土を司る神様が支配する期間のため、土用期間中は土を動かしてはいけないとされています。
具体的には、種まき・草むしりのように土をいじることや、井戸を掘ること、家を建てたりすることなどを「土動かし」と言い、土用期間には禁止とする風習がありました。 - 新しいこと・場所を移動すること
土用はそれぞれ季節の変わり目に当たるため、体調を崩しやすい時期でもあります。
そのため、土用期間には転職や就職、結婚や新居購入、旅行など「新しいこと・場所を移動すること」は避けたほうがいいとされていたようです。
もちろん、これらは古代の思想によるものなので、現代において「絶対にしてはいけない」わけではありません。
まとめ
いかがでしたか?
「土用の丑の日」が、多少なりとも理解できましたでしょうか?
言葉は知っていても、意味までは考えたことなかった、ということって意外とありますよね。
土用の丑の日、我が家では普段はなかなか口に入れられない高価なうなぎを、購入する勇気が出る日、となりつつあります^^;
とはいえ、今年(2022年)のように2回あっても、そこは1回で勘弁してもらいたいですねTT
皆様の素敵な食卓を願いつつ・・・
まず、丑の刻が午前1時~3時を指し、さらに、1つの刻(いっとき)を30分刻みで4等分するので、丑三つは現代の時刻にすると、午前2時から2時半の間(もしくは午前2時)ということになります。